「さらばオーロラ」
   
旅の最後の晩に
この日、アビスコに珍しく日本人のお客さんがありました。モニカが駅に迎えに行くというので、ホテルの前で待っていると、最終列車でやってきました。何でもキルナ市内に泊まっているのだけれど、オーロラが見えないので、ここまで来ましたとのこと。(キルナの街は気温が高く、よく霧で覆われるのです)その直後、すばらしいオーロラが出現したので、その方達にも車に乗ってもらい、急ぎアビスコ郊外へ。そこには息を飲むような光景が待っていました。

全天を横切る明るいオーロラ
それは天空を暗と明に引き裂くような、閃光をを伴った光の帯でした。帯は一時も形が固定せず、カーテンを激しく揺らしたようにゆらめいています。私は何十回もオーロラを見ていますが、これほど変化の激しいものははじめてでした。この写真はシャッタースピードわずか0.5秒(三脚不要でした!)ですが、動きが激しい為、オーロラの縞模様がぼやけて写っています。

ラップランドに舞う
開高 健風に言えば、「旅の最後の日、極北の冷たい空は、愚かな旅行者に大自然の片鱗を見せてくれた・・・」となるでしょう。そこにウィスキーがあれば私は指につけて、オーロラに向かってふりかけていたでしょう。

さらばアビスコ、さらばオーロラ!
人生にも旅にもクライマックスというものがあります。今回の旅のクライマックスは最終日のこの時だったように思います。振り返ったアビスコの街の上に幾筋もの雄大なオーロラ。私は三脚の前にひざまずいて、無心にそして敬虔に「ありがとう」とつぶやきました。

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